出口和明著『出口直・王仁三郎の予言・確言』からの抜粋
 地上の人類はそれぞれ天の星を負って生まれてくる。しかし多くは暗星で光を放っていないから見えない。大臣でも三等星か四等星、歴史上の人物では豊臣秀吉や西郷隆盛が一等星であった。王仁三郎自身の星はといえば、天の囚獄(ひとや)オリオン星座で、瑞(みず、三つ)の御霊が千座の置戸を負って立つ姿だとみずからは言う。天に描かれた巨大な囚の字形に四隅を封じこめられた形の三つ星、王仁三郎の背には、まざまざとその印が大きな黒子(ほくろ)となって刻されているのだ。(略歴の写真ご参照)
 オリオンは、ギリシア神話に出てくるゼウスの弟で大海原を治めるポセイドンの子、海上を自由に歩ける狩の好きな美しい巨人であった。太陽神アポロンの妹・月の女神アルテミスに愛されたが、アルテミスは兄神アポロンにあざむかれ、海中を歩くオリオンを殺してしまう。気がついたアルテミスは、嘆きつつその死体を天の星の中にとじこめてしまった――。
 オリオンが海を治める神の子で太陽神と争って星に囚われるなど、やはりスサノオノ命の宿業(しゅくごう)を暗示していよう。黒子といえば蒙古では王仁三郎が支那服を誂(あつら)えたとき、盧占魁(ろせんかい)は支那で高名な観相学者をそっと呼び入れて救世主としての資格のしるしを調べさせたという。結果は背の黒字も含めて、三十三相を具備した天来の救世主とのことに驚喜して、盧をはじめ、蒙古王貝勒(ばいろく)、将校、馬賊の頭目たちが敬慕したようだ。当時は天下筋(てんがすじ。手のひらの縦筋が中指の先まで通ったもの。天下を取る相という)が八本であったのが、間もなく十本(五天紋)になっている。みずから囚われの身となるべき運命を知りつつ、それに向かって歩みつづけねばならぬ予言者は悲しい。

なお、『霊界物語』特別篇「入蒙記」第九章「司令公館」にはこうあります。
盧占魁は日出雄(王仁三郎のこと)が支那服を誂へた時、ソツと被服商の主人に言ひ含め、支那にて有 名なる観相学者を呼んで来て、古来伝説にある救世主の資格の有無を調べむため、日出雄の骨格や容貌や、 目、口、鼻、耳等の形から胸のまはり、手足の長短等から、指の節々、指紋等に至るまでを仔細に調べ させた結果、いはゆる三十三相を具備した天来の救世主だと言つた観相家の説に、随喜の涙をこぼし、 いよいよ蒙古王国建設の真柱と仰ぐに至つたのである。かかる注意の下に盧占魁が日出雄の身体を調べ てゐるに拘らず、日出雄は索倫山(さうろんざん)の本営に行つて盧占魁が自白するまで、そんな事と は気が附かなかつたのである。観相者は特に日出雄の掌中の四天紋(してんもん)と指頭の皆流紋(か いりうもん)を見て、左の如き断定を下した。

     掌中四天紋=乾為天

 大哉乾元万物資始乃統天雲行雨施品物流形大明終始六位
 時成時、時乗六竜以御天乾道変化各正性命保合太和乃利
 貞出庶物万国咸寧。

     指紋皆流=坤為地

 至哉坤元万物資生乃順承天、坤厚載物徳合旡彊、含弘光
 大品物亭牡馬地類行地旡彊柔順利貞君子攸行、光迷失道、
 後順得常西南得明乃与類行東北喪明乃終有慶安貞之吉応
 地旡彊。

盧占魁は更に、日出雄の掌中に現はれたるキリストが十字架上に於ける釘の聖痕や、背に印せるオリオ ン星座の形をなせる黒子等を見て非常に驚喜した。そしてこの次第を哥老会(からうくわい)の耆宿 (きしゆく) 揚成業(やうせいげふ)や蒙古王の貝勒(ばいろく)、貝子鎮国公(ばいしちんこくこう) を初め、張彦三(ちやうげんさん)、張桂林(ちやうけいりん)、鄒秀明(すうしうめい)、何全孝(か ぜんこう)、劉陞三(りうしようさん)、大英子児(タアインヅル)、賈孟卿(ジヤムチン)等の馬賊の 頭目や、張作霖(ちやうさくりん)部下の将校連にも之を示し、天来の救世主だ、この救世主を頭に戴いて 内外蒙古に活躍すれば成功疑ひなしと、確信してゐたのである。それゆゑ日出雄は蒙古に入つても凡ての 上下の人々より、非常な尊敬と信用を受けたのである。

下木局子の盧軍司令部前での王仁三郎 (最前列左から5人目)と盧占魁(その左)。(大正13年5月12日)